
製造業・物流業向けZEB建築すすめ
本記事ではZEB建築のすすめというテーマで紹介します。
ZEBは、エネルギー排出を実質ゼロにする環境に優しい建物です。光熱費を削減し、環境取組みでは企業のブランディング効果も高めてくれます。
国のZEB関連の目標では、2030年度に非住宅建物にて30~40%の省エネ削減が必要とされていますが、非住宅のZEB導入は2021年度198件にとどまっています。
ZEB普及における課題や国の施策を踏まえ、ZEB建築導入に向けたポイントを紹介します。
目次
図.ZEBの概要イメージ
(出典)環境省HP ZEB PORTAL
(https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html)
ZEBとは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)の略です。
建物で消費する年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物です。このため、エネルギー消費量が実質ゼロに届かない場合はZEBとは認められません。
エネルギー削減の達成具合で、①ZEB、②ニアリーZEB、③ZEBレディー、④ZEBオリエンティッドの4つに分けられます。
図.ZEBを実現する創エネ、省エネのイメージ
(出典)環境省HP ZEB PORTAL
(https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html)
建物で使うエネルギーについて紹介します。
ZEBを実現するための技術は、①消費するエネルギーを減らすための技術(省エネ技術)と②エネルギーを創るための技術(創エネ技術)に分けられます。
省エネはエネルギー消費を節約することです。省エネは、①アクティブ技術(エネルギーを無駄なく使用する)と②パッシブ技術(エネルギーの需要を減らす)に分けられます。
そして、③使うエネルギーを創エネ技術によって賄うといったステップで、ZEBが実現します。
建物のエネルギーの種類を紹介します。
発電所から送られる電気、ガス、熱のエネルギーは、空調、換気、照明、給湯、エレベーター、OA機器などの形で消費しています。
ただし、OA機器はZEBのエネルギー消費の対象になりません。
理由は、空調、換気、照明、給湯、エレベーターは建物の消費ですが、OA機器は建物以外の個別の機器の消費になるためです。
自社の建物で使うエネルギーできるだけ減らし、建物で新しくエネルギーをつくることでZEBに近づけていきます。
電気、ガスなどの光熱費は値上がりが続いていますので、省エネ、創エネの取組みによって自社の不要な光熱費の出費も抑えることができます。
図.各用途における設備別エネルギー消費量の割合
建物用途別のエネルギー消費の内訳では、照明、換気、空調、給湯が多い傾向があります。
【建物用途別のエネルギー消費の内訳】
・工場は、照明によるエネルギー消費が99%を占めています。
・百貨店、学校、事務所、集会所は、空調と照明によるエネルギー消費が多くなっています。
・病院、飲食店は、空調、換気、照明、給湯によるエネルギー消費が多くなっています。
・ホテルは、空調、照明、給湯によるエネルギー消費が多くなっています。
このため、省エネ設計では、エネルギー消費が多い建物設備から優先的に見直すことが効果的であると言えます。
自社の工場、倉庫、事務所をZEBで建築した場合は、ZEBリーディングオーナーに登録します。
ZEBリーディング・オーナーは、ZEBロードマップに基づき、ZEB普及目標やZEB導入計画、ZEB導入実績を一般に公表する先導的建築物のオーナーです。
ZEBリーディング・オーナーは、登録年と登録番号が記載されていますので、登録番号付きを使用ができるのは、登録したZEBリーディング・オーナーのみになっています。

図. 2030年に向けたZEB普及イメージ
ZEBリーディング・オーナーの目的は、2030年度に向けたZEB普及を目指しています。
2019年にスタートしたZEBリーディング・オーナーでは、環境への先進的な取組事例としてのPRと、CSR(企業の社会責任)としての情報発信を狙いとしていました。
ZEB認知向上のために、ZEBパンフレットの公開も行っています。
また、ZEB設計ガイドラインを活用し、ZEBプランナー制度によるZEB事業の活性化を進めています。
ZEBプランナー制度は、①設計、②設計施工、③コンサルティング等の3分類があります。分類ごとのZEB研修など求められる実績を満たす必要があります。
ZEBの2030年度目標では、「新築建築物の平均でZEBを実現」とあります。
政府では、地球温暖化対策において、ZEB達成の目標を定めています。
表. 2030年度のCO₂削減目標
(出典)環境省HP 地球温暖化対策計画
(https://www.env.go.jp/content/900440195.pdf)
全体目標では、2030年度にCO₂を45%減(2013年度比)を掲げています。そのうち、業務部門は、2030年度にCO₂を51%減(2013年度比)としています。
2030年度目標では、非住宅建物にて30~40%の省エネ削減が必要とされています。
・ホテル、病院、百貨店、飲食店、集会所等:30%削減
・事務所、学校、工場等:40%削減
※再生可能エネルギーを除く
非住宅建物にて30~40%の省エネ削減は、ZEBオリエンティッドに分類される達成度です。
2030年度の目標では、非住宅の建物をこのZEBオリエンティッドの達成レベルまで持っていこうとしています。
図. ZEBレディの概要イメージ
(出典)環境省HP ZEB PORTAL
(https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html)
前述のとおり、ZEBは達成度によって4段階に分けられています。参考までに、残り3つの段階も紹介します。
ZEBレディは、従来の建物で必要なエネルギーに対して、省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上削減を実現している建物です。
ニアリーZEBは、従来の建物で必要なエネルギーに対して、省エネで基準一次エネルギー消費量から75%以上削減を実現している建物です。
省エネ(50%以上)+創エネで合計75%以上の一次エネルギー消費量の削減を満たす必要があります。
図.ZEBの概要イメージ
(出典)環境省HP ZEB PORTAL
(https://www.env.go.jp/earth/zeb/about/index.html)
ZEBは、従来の建物で必要なエネルギーに対して、省エネで基準一次エネルギー消費量から100%削減を実現している建物です。
省エネ(50%以上)+創エネで合計100%以上の一次エネルギー消費量の削減を満たす必要があります。
4段階のすべてを総称してZEBと呼ぶこともありますが、明確には基準を満たしたもののみZEBと呼ばれます。
以上、ゼロエネルギーの達成状況4分類でした。
ZEBリーディング・オーナーは、達成状況4分類全ての建物を対象としていますので、建設した場合は登録を進めましょう。
ZEB取得状況内訳では、ZEB Ready111件/198件(2021年度)と多くなっています。
ちなみにBELS(ベルス)とは、建築物の省エネルギー性能を、第三者評価機関が評価し表示する制度です。
BELSで認められたZEB取得は、2021年度に198件ありますが、内訳はZEBが40件、ニアリーZEBが33件、ZEBレディーが111件、ZEBオリエンティッドが14件です。
非住宅建物では、198件/49,599件(0.4%)と非常に少なくなっています。
数値から見ると、非住宅では、施主のZEBに対する理解や関心はまだ低く、普及に至っていない実情が分かります。
ZEB普及における課題は、以下が挙げられます。
①導入コスト
ZEBは、高断熱性能や太陽光発電システムなどの設備導入が必要となるため、導入コストが高くなります。
②技術的な課題
高層建築や複雑な形状の建築物など、ZEB化が難しい建築物も存在します。また、ZEBシステムの最適な設計・施工や、既存建築物へのZEB化などの技術的な課題も残されています。
③制度・政策
ZEB導入に対する補助金や税制優遇措置が十分ではない、ZEBに関する情報提供や人材育成が不足しているなどが指摘されています。認証手続きの手間なども挙げられます。
④消費者・事業者の理解
ZEBのメリットやデメリット、導入にかかる費用などについて、消費者や事業者の理解が十分に進んでいないという課題もあります。
⑤ライフサイクルコスト
ZEBは、省エネ効果が十分に得られない場合や、設備のメンテナンス費用がかさむ場合など、ライフサイクルコストが従来の建築物よりも高くなる可能性もあります。
地域脱炭素ロードマップの重点施策では、ZEB目標数値の達成に向けて以下を推進しています。
<地域脱炭素ロードマップの重点対策>※ZEB関連対策のみ抜粋
①屋根置きなど自家消費型の太陽光発電
②公共施設など業務ビル等における徹底した省エネと再エネ電気調達と更新や改修時のZEB化誘導
③住宅・建築物の省エネ性能等の向上
例えば、テナントで入る場合、ZEBオフィスは、光熱費を削減により経費を抑え、従業員の満足度や業務効率化、集客力アップに寄与します。
自社でZEBオフィスを建てる場合は、資産価値を高め、テナント誘致競争力が高まります。
ZEB導入のコストを抑えるために使える補助金も紹介します。
表.ZEBで使える補助金一覧
ZEB関連補助金の利用状況ですが、令和4年度で、経産省11件、環境省9件と採択が少なくなっています。
ZEB登録件数が少ない分、補助金申請の申請数や採択数も少なくなっています。
ZEBを計画する際は、セットで補助金申請も進めていきましょう。
本記事のまとめです。
☑ ZEBとは、建物で消費する年間の一次エネルギー収支をゼロにすることを目指した建物です。
建物のエネルギー消費内訳では、照明、換気、空調、給湯の消費が多くなっています。
☑ 国のZEB関連の目標では、2030年度に非住宅建物にて30~40%の省エネ削減が必要とされています。
☑ ZEB取得状況は、2021年度198件と少ないです。割高なコスト、ZEBの設計・施工の技術の難しさ、消費者・事業者への理解浸透などが課題です。
☑ ZEB関連の補助金は、令和4年度で、経産省11件、環境省9件と採択が少ないです。
ぜひ、ZEBオフィスに取組み、先駆者メリットを得ていきましょう。
早期にZEBに取り組んでいただくことによって、金融機関・投資家の評価アップや、求人応募者の増加など、先駆者メリットも数多くあります。
自社のオフィス建築計画があがった際には、ぜひZEB導入を進めていきましょう。
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設立 | 1963年5月31日 |
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資本金 | 30億円 |
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株主 | 伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 66.7%、住友商事グループ 33.3% |
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