物流業界の2024年問題と対策
本記事では、物流業界における2024年問題についてご紹介しています。
働き方改革の関連法改正によって、労働環境の改善が図られることが期待される一方で、物流会社では人財不足や利益圧迫が懸念されています。
物流業界の課題は、トラックドライバーの採用です。物流のデジタル化推進とともに求められる管理職の人材育成も必要です。また、労務負担を軽減する中継拠点づくりも求められています。
ぜひ、来たる2024年に向けて早期の対策に取組みましょう。
目次
物流業界における2024年問題
物流業界における2024年問題とは、働き方改革関連法の適用に伴い、物流業界で懸念されている人材不足や利益圧迫などの問題です。
2023年度以降では、以下の2つが改正となります。
●月60時間を超える時間外割増賃金が中小企業で25%⇒50%に引き上げになります。(2023年度から運用)
●時間外労働が年960時間超のトラックドライバーは上限規制の対象になります。(2024年度から運用)
物流業界は、全産業の中で最も労働災害と過労死が多い業界です。
全産業平均に比べて1~2割低い賃金、2割長い労働時間、手作業による積卸し作業など、トラックドライバーの過酷な労働環境が問題視され続けています。
今回の改正によって労働環境の改善が図られることが期待される一方で、物流会社の人財不足・利益圧迫されるという二律背反の関係が問題となっています。
物流業界の2024年問題の現状と対策
物流業界における2024年問題の現状と対策について、詳しく見ていきます。
トラックドライバーの人材不足の状況
図.道路貨物運送業における自動車運転者従事者数の推移
(出典)一般社団法人日本物流団体 連合会物流標準化と物流現場の現状
(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001410731.pdf)
日本のトラックドライバーは、約76.7万人です。(2015年時点)ピーク時(1995年)の約98万人から、約21.3万人減少しています。
物流現場の大きな課題の1つが「トラックドライバーの不足」です。
コロナ禍による景気低迷下でもトラックドライバーの有効求人倍率は2倍前後と募集しても集められな い状況が続いています。トラックドライバーの高齢化も、年々顕著となっています。
今後のトラックドライバーの人材採用
図.主な産業ごとの必要となる労働者数の相対的変化(高成長シナリオ)
(出典)経済産業省HP 未来人材ビジョン
(https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf)
日本の生産人口は、2020年は約7,400万人ですが、 2050年には約5,300万人と2/3に減少します。
一方、2020年から2050年にかけて、運送業の従事者は、全従業員数に占める割合で10%の雇用増加が見込まれます。
生産年齢人口は減少するものの、運送業の従事者の雇用を増やしていく必要があります。
雇用が減少する産業からの未経験者ドライバーを採用していくなど、人材獲得のための戦略を練っていく必要があります。
日本の生産人口にともない、注目が集まるのが外国人労働者です。
国内全体の外国人労働者は、 2030年は需要約419万人に対して約63万人、 2040年は需要約674万人に対して約42万人が不足します。
外国人労働者のドライバー登用などが期待されますが、現在は、認められていません。
理由は、トラックの運転業務が「単純労働であり、技術移転を趣旨とする技能実習制度の趣旨にそぐわない」との見方があるためです。
全日本トラック協会では、トラック運転業務以外の車両点検、庫内業務、荷主先での検品、積卸しなどの道路貨物運送業務を、「技能実習2号移行対象職種」に追加するよう要望を進めています。
このため、トラック運転業務以外の物流業務にて、外国人労働者の登用を進めていくことが当面は有効です。
物流事業のDX化
図. 物流業務におけるDX(自動化・機械化/デジタル化)導入状況
(出典)国土交通省HP 物流・配送会社のための物流DX導入事例集
(https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001490829.pdf)
日本人および外国人労働者人口の不足が懸念されるなか、将来、日本の労働人口の49%が自動化されるとの予測があります。
物流施設内では、完全無人トラックの走行も行われています。
既存トラックへのシステム装備、GNSS(衛星情報)受信機の設置により、物流施設の敷地内での無人走行が可能となります。
自動運転トラック搬送をはじめとして、配送、倉庫のそれぞれで自動化・機械化とデジタル化を進めていくことが期待されます。
DX化で求められる人物像の変化
自動化・機械化とデジタル化とともに、企業に求められる人物像も変化しています。
図.能力に対する需要
(出典)経済産業省HP 未来人材ビジョン
(https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220531001/20220531001-1.pdf)
これまでは、作業従事者の注意深さやミスの少なさ、責任感・真面目さ、読み書き・計算スピードが求められてきました。
しかし、将来は、単純作業は機械が行うため、管理者としての問題発見力、的確な予測、革新性が一層求められるようになります。
物流のデジタル化推進とともに求められる管理職の人材育成も必要です。
中継拠点づくりの必要性
トラックドライバーの厳しい労働環境を改善し、労務負担を軽減するには、中継輸送づくりが有効です。
中継輸送は、1つの輸送行程を複数のドライバーで分担し貨物を輸送します。
分担するので1人の運行より長時間労働が改善され、ドライバー1人当たりの運転時間や移動距離を短縮できます。
図.中継拠点づくりのイメージ
(出典)国土交通省HP中継輸送の実証実験について
(https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001513188.pdf)
中継輸送の方式は以下の3つあり、全国で導入に向けた実証実験が進められています。
<中継輸送方式>
・トレーラー・トラクター方式(ヘッド交換方式)
・貨物積替え方式
・ドライバー交替方式
トレーラー・トラクター方式(トレーラーのヘッドを交換する方式)
図.トレーラー・トラクター方式のイメージ
(出典)国土交通省HP中継輸送の 取組事例集
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001325036.pdf)
中継拠点でトラクターの交換をする方式です。
ヘッド交換は、ほんの数分で完了するため、中継拠点での交換作業は短時間です。
注意点では、中継拠点はトレーラーが駐車できる十分な敷地スペースが必要です。
また、ヘッドとシャーシが連結可能かどうか、牽引免許を持っている運転者同士かどうかなど、事前に確認が必要です。
実証実験結果では、トラックドライバーの一般車両と分離した動線や専用の駐車スペース、トレーラーや ヘッドの一時保管スペースがあるとよいなどの意見があがっています。
図.貨物積替え方式のイメージ
(出典)国土交通省HP中継輸送の 取組事例集
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001325036.pdf)
中継拠点で貨物を積み替える方式です。
中継拠点での積替作業が必要となりますが、日ごろから実施しているクロスドック(積み替えを中心とした拠点機能)と同じであり、他の中継方式と比べると、制約が少なく取り組みやすくなります。
一方、荷役作業員の確保が必要であり、荷役コストが発生します。
また、積み替え時間が長くなりがちであり、積み替え作業時に貨物を破損するリスクも発生します。
実証実験結果では、荷役作業時間短縮するための方策や、荷崩れ事故などの防止のための貨物の積載状況や固縛(こばく)方法の取り決めが必要などの意見があがっています。
図.ドライバー交替方式のイメージ
(出典)国土交通省HP中継輸送の 取組事例集
(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001325036.pdf)
中継拠点でトライバーが交替する方式です。
中継拠点での交換作業は短時間で済み、中継拠点での制約は少ないです。
一方、自社の車両が自社に戻るまでのスケジュールの検討が必要となります。
また、慣れない他社の車を運転する「ドライバーストレス」の対策も必要です。
中継輸送の方式のまとめ
中継輸送方式の導入には、初期投資がかかります。業界大手の運送事業者に比べて、体力のない中小・零細の運送事業者の参加は、若干、ハードルが高くなります。
中継地点での到着時間の遅れや事故の発生などについて、事前の協議、書面と取り交わしなども必要です。
複数で実施する場合は、輸送効率が良くなった分、運賃コストが安くなるなどのデメリットも運送事業者から指摘があがっています。
一方で、中継輸送方式の導入は、不規則な就業形態や長時間労働を解消できるとともに、女性の短時間勤務の導入など、新たな可能性も広がります。
関係省令・通達において中継輸送に関する規定・解釈を明確にし、制度面を含め環境整備を図っていくことが期待されます。
物流企業が今取り組むべきこと
2024年問題に対して、物流企業今取り組むべきことを、以下①~⑫で整理します。
①∼⑫を実現していくためには、社内で旗振り役となるキーマンの存在も重要です。
<物流企
① 輸送形態の見直し・切り替え
② 協力会社・輸送ネットワークの強化
③ デジタル化推進による生産性向上
④ 人材採用・育成・定着の強化
⑤ 管理職のレベルアップ
⑥ 人事・賃金制度の見直し
⑦ 労務管理の強化
⑧ 荷主交渉(運賃値上げ・条件改善)
⑨ ⑧を実現するための収支管理・原価管理の強化
⑩ 予実管理・(先行)指標管理の導入
⑪ 新規荷主獲得のための、マーケティング・営業強化
⑫ M&Aも含めた成長戦略の再構築
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伊藤忠丸紅住商テクノスチール株式会社
設立 | 1963年5月31日 |
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資本金 | 30億円 |
従業員 | 400名(派遣社員、嘱託、委託社員等を含む)(2020年4月現在) |
株主 | 伊藤忠丸紅鉄鋼株式会社 66.7%、住友商事グループ 33.3% |
取扱商品 | 鉄鋼製品、建築用・土木用・道路舗装用・設備機器用の資機材類の販売、各種工事請負等 |
取引銀行 | みずほ銀行 日本橋支店 三井住友銀行 日本橋支店 三井住友信託銀行 本店営業部 |
建設業許可 | 国土交通大臣許可(特-3)第10910号 建築工事業 国土交通大臣許可(般-3)第10910号 大工工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、タイル・れんが、ブロック工事業、 鋼構造物工事業、鉄筋工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、内装仕上工事業、建具工事業 |
宅地建物取引業許可 | 東京都知事許可(3)第87072号 |
一級建築士事務所登録 | 東京都知事登録 第55860号 |
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